(特集記事)「避難所における外国人被災者支援研修」開催レポート ー災害の多い日本で、外国人住民も安心して暮らせる地域づくりを考えるー
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東京都つながり創生財団では、人と人とがつながり、誰もが安心して暮らせる「多文化共生社会づくり」に日々取り組んでいます。その一環として私たちが行っている取り組みの一つが、災害時における外国人被災者支援体制の整備です。
都内の外国人住民は、2024年10月時点で約70万人でしたが、2026年1月には約78万人に達しました。急激なペースで増加が続いているものの、外国人住民を受け入れる体制は、まだ十分とは言い切れない部分もあります。もちろん、これは一朝一夕で解決できることではありません。しかし、そうした状況に関わらず、災害はいつ起こるかわかりません。
そこで当財団では、「避難所における外国人被災者支援研修」を実施しています。 2025年度は、12月5日、たましんRISURUホールにて開催。自治体や国際交流協会、社会福祉協議会の職員、そして市民ボランティアなど、それぞれの立場で在住外国人支援や地域づくり等に取り組まれる参加者の皆様とともに、災害時の外国人支援について学びました。
外国人被災者の支援は、「安心を届けること」からはじまる
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研修の冒頭では、熊本市国際交流振興事業団の八木浩光さんによる講義が行われました。2016年の熊本地震での経験を踏まえながら、まず八木さんがお話しされたのは、外国人被災者支援において、とても大切になる「安心を届ける」という姿勢です。
八木さん:外国人被災者の多くは、日本人以上の不安を抱えながら避難所での日々を送っています。だからこそ、行政による「公助」がはじまるまでの「共助」を担う皆様に意識していただきたいのが「安心を届ける」という姿勢です。
また、熊本地震後の外国人被災者への聞き取り調査からは、「言葉の壁」や「文化の違い」によって生じる課題も明らかになってきたといいます。
八木さん:災害時の防災放送では「給水」など、日常生活ではあまり使われない日本語が多く使われます。そのため、日本で長く生活している外国人であっても、内容を十分に理解できず戸惑うことが少なくありません。さらに、文化の違いによって誤解が生じる場合もあります。例えば、「ご自由にお取りください」という表現を、「いくつでも持ち帰ってよい」という意味だと受け取ってしまい、周囲との間に摩擦が生じたケースもありました。だからこそ災害時には、文化の違いも考慮しながら、「やさしい日本語」でコミュニケーションすることが重要になります。
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こうした課題を挙げながら、最後に八木さんが強調したのは、「外国人住民は支援されるだけの存在ではない」ということです。
八木さん:外国人住民の方は、日本人に比べると比較的若いことが多く、高齢化が進む地域にとっては大きな力となるはずです。彼らも地域の「担い手」として共に歩んでいけるよう、平時から顔の見える関係を築き、いざという時に手を取り合える土壌を作っておくことが重要です。
避難所巡回に欠かせない姿勢と、「記録」の重要性
続いての講義では、東村山市市民相談・交流課多文化共生相談員の杉田理恵さんから、外国人被災者支援に欠かせないアプローチとなる「避難所巡回※」の流れやポイントについて詳しくお話しいただきました。
※「避難所巡回」とは、「言葉の壁」や「文化の違い」によって災害弱者になりやすい外国人被災者に対して、避難所を訪問し、避難先の外国人から困りごとを聞き取ったり、情報提供をしたりする活動のことを言います。
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杉田さん:避難所巡回を行う際は、まずは受付で巡回の目的を明確に伝えるようにしましょう。実際に避難所に入ったら、掲示物などを確認し、現地での情報をできるだけ多く収集することも大切です。そのうえで外国人被災者に話を聞く際には、ヒアリングした内容を必ず「記録に残すこと」を意識してください。巡回者や被災者の名前といった基本的な情報に加え、会話を通じて気づいた点や、次回の巡回者への引き継ぎ事項を整理し、あとからでも確認できるレポートとしてまとめることが重要です。 外国人被災者にヒアリングする際の姿勢についても、より具体的なアドバイスが共有されました。
杉田さん:やはりキーワードになるのは「安心」です。たとえば、座っている方に話しを聞く際には、こちらも身をかがめて視線の高さを合わせるようにしてみてください。寄り添いの姿勢を示すことで、相手のニーズも引き出しやすくなり、それが結果的に「安心を届けること」にもつながります。 また、避難所巡回におけるヒアリングは、一般的な外国人相談とは異なる点があることを意識することも重要だといいます。
杉田さん:普段の外国人相談では、できるだけ多くの課題を引き出すことに注力されると思います。けれど避難所巡回におけるヒアリングでは、今すぐ対応が必要な課題の解決に焦点を当てることが重要です。また、その場で解決できなかった課題は、次回の巡回者へと引き継ぐ旨を必ず伝えるようにしてください。継続してフォローアップする体制があることをきちんと示すことで、被災者の不安を軽減することにつながります。
ロールプレイで見えてきた、避難所巡回の「難しさ」と「気づき」
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講義のあとは、参加者がグループに分かれてワークショップを実施。「地震発生から3日後の避難所で、外国人被災者を支援する」という設定で、避難所巡回のロールプレイを行いました。
ここで参加者のみなさんが直面したのは、やはり「言語の壁」です。被災者役を務めてくれた外国人協力者に、「やさしい日本語」で話しかけてみたり、ジェスチャーを使ってみたり試行錯誤。翻訳アプリなども活用しながら、「ミルクやおむつの提供場所」や「シャワーの利用方法」といった、被災者が必要とする情報をていねいに伝えている姿が印象的でした。
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ロールプレイ後の振り返りでは、「避難所の運営サイドとの連携の重要性に気づいた」という声や、「ニーズを聞き出すことに意識が向きすぎ、電話番号など基本的な情報を聞き漏らしてしまった」という反省点などをグループごとに共有。さらに、「外国人住民に日頃から防災訓練に参加してもらえるよう働きかけたい」「(日本人側にも)外国人について興味・関心を持ってもらう機会を設けたい」といった、今後の実践につながる意見も挙がりました。
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杉田さんからも、「ヒアリングする前には、必ず自己紹介をするようにしましょう」「グループ内での情報共有や役割分担をもっと意識してほしい」といった改善点のフィードバックをいただきました。最後に、「大切なのは被災者に寄り添うこと。言葉が通じなくても、話を聞いてくれる人がいるだけで心強いはず」と、避難所巡回における基本的な姿勢が共有され、研修は締めくくられました。
今回のような研修が、外国人対応の視点を取り入れた避難所運営や、日本人・外国人が一緒に取り組む避難訓練等が各地域に広がるきっかけになればと考えています。 これからも、東京都つながり創生財団では、国際交流協会や社会福祉協議会などと連携しながら、訓練や研修などを実施し、誰もが安心・安全に暮らせる地域づくりに貢献していきます。